「東海道四谷怪談」、忠臣蔵ゆかりのお話だったってご存知でしたか?
そうです。右目がただれたお岩さんのあの演目です。
わたし、以前観ているんですが、まったくそのようなストーリーとは記憶しておらず・・・。
歌舞伎は好きですが、基本はミーハーな観方(それでも十分楽しいのが歌舞伎)。この「四谷怪談」は、怪談としても秀逸ですが、歌舞伎の「ケレン」と呼ばれる宙乗りや早変わりなど、奇抜な仕掛けの演出がとにかくすごくて、歌舞伎の舞台としての醍醐味を存分に味あわせてくれ、「歌舞伎ってすごい!!」と心から感動しました。
基本的に怪談ものは真夏の風物詩。
しかし。なぜか今年は12月。クリスマス気分満載の冬の真っ只中に、この「四谷怪談」が東京・国立劇場で上演されております。
そう。それが冒頭の「忠臣蔵ゆかりのお話」というところとつながるのです。
歌舞伎の三大狂言の一つ「仮名手本忠臣蔵」の原作者、四世・鶴屋南北は、表の話として「仮名手本忠臣蔵」を書き、その裏の話として「東海道四谷怪談」を作ったとか。
以前、市川染五郎さんがトークショーで、「忠臣蔵との関わりを感じてもらうために、冒頭に1幕追加する」とお話されておりました。
12月14日は赤穂浪士の討ち入りの日。だから12月に上演するのもありなんです。
今まで討ち入りの日に、「東海道四谷怪談」が上演されたことは過去をさかのぼっても一度もなく、今回初めて。
というわけで、12月14日限定のゆるキャラまで登場しました!
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まず、四谷怪談のよく知られたあらすじは「人でなしの夫に裏切られ、非業の死を遂げたお岩が、化けて出て、徹底的に復讐をする」というもの。
で、実際に過去歌舞伎でみたときの印象&感想は
◎仕掛け&演出がすごい!歌舞伎の醍醐味を味わえるから、「四谷怪談は人気なんだ!」
◎お岩さん、かわいそうすぎる(涙)。
この2つの印象が強烈でした。
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そして今回の「東海道四谷怪談」を見終わっての感想は
◎お岩さん、かわいそうすぎる(涙)。←「髪梳きの場面」本気で泣けます。
◎伊右衛門(岩の夫)の人でなしっぷりがひどすぎる!!
という情緒的な2点と、それ以外は
◎「忠臣蔵とのかかわり」がこんなに深いとは目からウロコ
でした。まず何より、お岩さん、お家取りつぶしの騒動がなければ、こんな境遇になっていないはず。
◎お岩さん=元塩冶藩士(歌舞伎の演目の中では塩冶藩士=赤穂藩士)、四谷左門の娘。現在も四ツ谷界隈に左門町があります。
◎民谷伊右衛門=お岩の夫で元塩冶藩士。しかし、こちらは根っからの悪党で、高師直(歌舞伎の演目の中では吉良上野介=高師直)の家臣・伊藤喜兵衛の孫娘と重婚。まあ、この娘とその親、祖父の伊藤喜兵衛が本気でサイテーなんですけど。
これがちゃんと頭に入るだけでも、裏切りがよりひどく、やるせなさがより深く、江戸庶民、そして日本人たちの心に赤穂浪士が響くのかがものすごいよくわかります。
また、発端「鎌倉足利館門前の場」(歌舞伎は江戸時代のことを描いたら、幕府から上演禁止になるので、すり抜けのために時代を鎌倉時代に移しています。だから人の名前も違っていてわかりにくい)で塩谷判官が高師直を切りつけたことがわかるだけでなく、近年はカットされることの多い「小汐田又之丞隠れ家」を取り上げたり(四十七士として最後に参加する又之丞に絡んだサイドストーリー)、塩谷浪士の討ち入りを描いた「師直館夜討」を全編の締めくくりで追加したりと、全体をとおして、まさに忠臣蔵と表裏一体。
初演のときは、『仮名手本忠臣蔵』と合わせて2日間にわたって上演されたそうで、
『忠臣蔵』と続けて演じると、塩冶義士・佐藤与茂七が伊右衛門を討ったあとに吉良邸の討ち入りに参加することになる。(wikiペディキュア)
再演以降は単独になっているようなので、徐々に切り離され行ったのかな?
もちろん、四谷怪談の醍醐味である「宙乗り」「戸板返し」「提灯抜け」「仏壇返し」などの仕掛けは健在で見応えがあるんですが、染五郎さん、美しすぎて、お岩さんのおどろおどろしさが際立ち、さらに場内の提灯がついたり消えたり、演出も凝っていて、ケレンだけでなく怪談としてもかなりのクオリティです。
今回の「東海道四谷怪談」は12月26日で終わってしまいますが、今後「東海道四谷怪談」を観る機会がある方は、ぜひ忠臣蔵と表裏一体の物語と思って観てみてください。
本当に目からウロコです。
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ちなみに、本日のランチ(まさに幕内弁当!)は「花道十八番弁当」1200円なり。
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