最近メディアで取り上げられることが増え、急激に目にする機会が増えた「乳児用液体ミルク」。

といっても、日本ではこの液体ミルクを入手するのは個人輸入だけなので、目にするのはその文字だけです。

お恥ずかしながら、つい最近まで私も「液体ミルク」の存在について全然知りませんでした。しかし、その存在を知った今は、「とにかく私も当時使いたかった!」「同じ思いをしなくていいように、早く日本で流通してほしい」というのが切なる思いです。

海外で売られてる乳児用液体ミルク。そのまま乳首をつけて飲ませたり、哺乳瓶に移し替えて飲ませたりする

海外で売られてる乳児用液体ミルク。そのまま乳首をつけて飲ませたり、哺乳瓶に移し替えて飲ませたりする

とにかく、私は母乳育児で苦労しました。

・生後半年で仕事に復帰するつもりだったから、せめて母乳で育てたかった

・でもまったくうまくいかず、生後2週間ごろから、週2回おっぱいマッサージ通い(桶谷式)。

・娘は飲むのが遅くて、1回飲むのに1時間以上(ミルクも追加)かかることもしばしば。そのあと搾乳30分以上。気づけばもう次の授乳・・・を24時間を繰り返し。

・にもかかわらず、乳頭混乱を起こし、直母拒否。

・母乳を維持するために、1回30分の搾乳を1日8回(3時間おき、もちろん24時間体制)

・保育園入園1週間前に、母乳経由で卵アレルギーが発覚

・アレルギー源を断つために、完全ミルクに切り替え

と、母乳神話にとりつかれたような半年を送りました。

ミルクに切り替えたあと、食の細い娘を見ながら、私が常に思っていたのは「この子、地震があったら真っ先に死んじゃう」ということ。

この度、ご縁があって、乳児用液体ミルク研究会の勉強会に参加させていただき、さらに代表の末永恵理さんにお話を伺う機会をいただきました。

https://haretal.jp/zatsugaku/pz2016110201/

末永さんは、いたって普通の専業主婦。たった一人で液体ミルクを日本で流通させるための署名活動をスタートし(署名はこちら)、すでに4万人超の署名を集め、団体を一般社団法人化し、内閣府の男女共同参画会議の場で議論されるところまでもっていったと思うと、全然普通の主婦ではありませんね。

その中で衝撃的だったのは「日本以外のほとんどの国で、液体ミルクが手に入る」ということ。

欧米諸国はもちろんのこと、お隣・中国や韓国、アフリカや中近東まで、それこそ世界中で普通に売られていてびっくり。

しかも、WHOでは「粉ミルクよりも無菌充填された液体ミルクのほうが安全」と感染リスクのある乳児には液体ミルクを推奨しています。

なんということでしょう。日本人、完全に取り残されてる。

日本で液体ミルクが注目されたのは、東日本大震災、中越地震、熊本地震と大きな震災があったとき。

東日本大震災のときに、フィンランドに住む日本人ママが善意で大量購入し、日本に送るも通関で引っかかり、日本フィンランド友好議員連盟の働きかけで被災地に到着。そのあと、2度の中越地震を経て、先日の熊本地震では、フィンランドの乳製品メーカーが寄贈してくれ、大々的にニュースに取り上げられました。

ちなみに、当時の日本フィンランド友好議員連盟の代表は小池百合子都知事。熊本地震のときに自ら動き、さらに都知事選のときの公約にも「液体ミルク」を掲げていたというからその先見の明に驚きです。

実際、末永さんは小池さんが国会議員時代にも、都知事になってからも直談判しています。もちろんそれ以外にも、メーカーやら国やらいろんなところに働きかけ、内閣府の男女共同参画会議のキーマーンにアメリカで出産して液体ミルクを使用していた女性がいたこともあり、会議で議題にあがり、菅官房長官が発言し、読売新聞が一面で取り上げ、思いのほか反響がよかったのでほかも乗っかり・・・という流れだったようです。

大まかなので、違っていたらすみません。

ただ、課題はたくさんあります。しかも、かなり各所にわたって。これが一筋縄ではいかなさそうな気配を醸し出してる(苦笑)。

◎厚生労働省→乳児用のミルクは「乳等省令」という法令で定義が決まっていて、なんとその中には「粉ミルク」しか規定がない。つまり「液体ミルク」はそもそも存在していない。この中に「液体ミルク」を追加するためには、試作品を作って、ちゃんとデータをとって、安全性が確認されて・・・とさまざまな手続きが待っている。現在、メーカーからのデータ待ちの段階。

◎消費者庁→赤ちゃん用の粉ミルク「乳児用調整粉乳」として「特別用途食品」に認定されている。そのため、液体ミルクは「特別用途食品」にならない。この文言なく普通に「乳製品」として流通させることは可能だが、そうなると乳児用として母乳と同じような成分が入っているだとか、安全性が担保されているだとか、そういったところまでカバーされない。

◎メーカー→実は2009年に「乳等省令」に業界団体が「液体ミルクを入れて〜」と申し入れをしているそう。折しも母乳神話の全盛期&底なしの少子化の中で、それこそ「利便性」に特化した新市場を開拓しようとした模様。が、現在、前述のとおり厚労省へのデータ提出で停滞。技術的な問題(無菌充填など)、コストの問題(粉ミルクの5倍くらいになりそうな試算)、品質維持(茶色くなる、沈殿物ができるなど一部海外製品に見られるものも、に本では受け入れられないのでは?と心配)、賞味期限(店頭に置いておく期間)など、解決すべき課題は山積み。

◎輸入→じゃあ、海外のものを輸入すればいいと思うけれど、個人輸入以外は無理。その理由は添加物にある。添加物といっても、体に悪いものではなく、日本では認可されていない母乳成分があるから。世界ではCODEXによって母乳成分が共通がされているが、日本ではなぜかタイムラグがあり、CODEXで新しく母乳成分として認められても、日本基準に入っていないものがある。そのため、海外のメーカーが添加している成分が、日本では無認可の添加物・・・というウソみたいな理由でNGとなっているのだ。

とまあ、とにかく、誰がどう動けばいいのやら。

国の動きとしては、まあ内閣府の男女参画会議が動いて、少し進展した感じがするのでやっぱり、外部からの風でしょうかね?まずは試作品だけれど、それも異業種参入でもいいくらいかしら?

末永さんの「まずは特区を作る」という案、大賛成です。

震災の時に備蓄としていることは間違いないんです。それこそ、親のおっぱいですら飲んでくれないことを経験した私としては、いざ災害が起こって「はい、飲んでー」といっても、赤ちゃんがすんなり飲んでくれるとは思えない(苦笑)。

そう思うと、できれば日頃から飲んでいてほしい。それがダメでも、災害時に、お湯がなくても、殺菌ができなくても、すぐに赤ちゃんが飲めるミルクがあるのは、お母さんたちにとって、この上ない安心感になります。

「そのために、母乳にすればいい」という人もいるし、それもわからなくありません。私もそう思って、おっぱいマッサージにせっせと通っていたくらいだし。

でも、それはちゃんと母乳育児ができた人や、男性や経験のない人の言葉。

誰でもいつでもちゃんと必要量が出るわけじゃない。

急に病気になって薬を飲んだら?

ストレスである日母乳が止まったら?

母乳量が赤ちゃんの成長に追いつかなくなったら?

末永さんが代表をつとめる一般社団法人乳児用液体ミルク研究会では、2016年11月30日までアンケート調査を行っています。これは「声」をきちんと届けるために。

その中では、ミルク育児をしている人だけではなく、完全母乳のママからも不安がたくさん寄せられているし、双子のママの切実な声もあるとのこと。

乳児用液体ミルクについてのアンケート(無記名)

無記名なので、ぜひみなさん、ご協力ください。

ちなみに、ネットで個人輸入で買える現物はこんな感じです。

 

 

 

 


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