いま、注目を集めている旅のスタイルがある。それが「ロケツーリムズ」=「ロケ地を旅する」というものだ。

「ロケ地観光」=マニアックなもの

と思われるかもしれないが、『ローマの休日』でオードリーヘップバーン演じるアン王女のようにスペイン広場を歩いて、真実の口に手を入れて・・・というコースが全世界的に定番になっているのは、まさに「ロケツーリムズ」の力。

毎年、大河ドラマや朝ドラの舞台が国内旅行の人気の旅先の上位になって、「経済効果が何百億円!」と新聞を賑わせるのも、まさにこのロケツーリムズなのだ。

全国の自治体でも「わがまちでロケを!」とロケ誘致合戦が盛んに行っているが、撮影されてそれをどのように観光につなげるかが課題となっている。それを解決するべく、国を挙げて取り組んでいるのが、観光庁の「ロケツーリムズ連絡会」だ。2012年に発足以来、自治体はもちろんのこと、鉄道会社や民間企業など、官民一体でどんどん大きくなっている。

そのロケツーリムズ連絡がこのほど、この会議に参加している自治体などにも門戸を開き「ロケツーリズフォーラム」を開催した。

座長は日本で唯一のロケ地情報誌「ロケーションジャパン」を発行している地域活性プランニングの代表・藤崎慎一氏。ロケツーリムズの第一人者。そして、今回のフォーラムではスペシャルゲストとして、大友啓史監督が登壇!

大友啓史

そう、大友監督といえば、映画「るろうに剣心」(佐藤健主演)で賞を総なめにし、最近大ニュースになった福山雅治さん主演大河ドラマ「龍馬伝」などの監督をつとめた今もっとも注目されている映画監督です。

 

そして、大友監督の何がすごいかというと、その監督としての実力はさることながら、撮影した地域の人たちが皆ファンになってしまうということ。それくらい地域に入り込んで撮影しているので、この日のフォーラムは、ロケツーリズムに興味がある&あわよくば監督に撮影してもらいたい地域が日本全国から大集結しました!

講演のテーマは「発見から感動へ、ウィンウィンの関係を築くために」。

監督曰く「ロケをする=生活をしに行く。1週間、10日間とその町に住むので愛着が湧いてくる。不思議なもので、ビジネスとしてではなく、愛情を反映していかないと、薄っぺらい映像になる」そうです。

だからロケハン(ロケをする場所を見つけるための下見)のとき、とにかくその町の匂いを嗅いで、その土地のものを食べて、飲んで、空気で、目で、胃袋で(笑)、感じるとのこと。

映画の場合、少人数でも20人、多いものだと150人〜200人体制で動くので、地域にとっても一大イベント。後世まで残る作品になる一方、地元の生活の中に切り込んでの撮影は調整も大変になる。

たとえば、大河ドラマ『龍馬伝』のとき、福山雅治さんの地元、長崎は『龍馬伝』でも第3の舞台として重要な地域。もちろん地元で撮影がしたい。

セットではなく本物に勝るものはないので、「なかでもグラバー園での撮影はどうしてもやりたかった」そうだが、折しもロケの時期は修学旅行のシーズン。ロケNGが出た。それを粘って「18時〜朝9時ならOK」までこぎつけるが、それだと夜間のシーンしか撮れない。

そこで、監督がとった行動は、龍馬にとっても、福山雅治さんにとっても大切な故郷・長崎で撮影するために、とにかく地元の人と飲み倒したそう(笑)。

それによってコミュニケーションが図れ、さらにアイデアがどんどん出てきた。

「普通は撮影のときは貸切にするけど、修学旅行生たちに撮影風景も開放しよう!そうしたら、ロケもできるし、修学旅行の+αの思い出になる!!」

「その手がある!!」となれば話は早い。特別なルートを作って、本番だけは協力してもらって、無事撮影も完了。まさに、地元も、修学旅行生も、撮影隊も、全員が「ウィンウィン」となったわけだ。

 

ロケの効果はこれだけではない。

たとえば、大友監督もプロでありながら、自身の出身地である岩手県の映画『リトル・フォレスト』(主演:橋本愛)を見て「これが岩手の景色なのか」とびっくりしたという。

「ロケ隊は地元の知らない景色を見つけてくれる。映像はもっともインパクトのある手法。”撮影のもつ魔法”というのがあって、それは照明だったり、メイクだったり、衣装だったりちょっとずつその景色に足すことで、作品になっていく」

”撮影のもつ魔法”、ステキな響き。そして、なんとなくわかる気がする。

なんでもない路地がものすごく印象的に見えたり、毎日見ている風景がストーリーと重なってインパクトのある画に変わったり。

「全国には演出を待っている場所がたくさんあると思っている」。

大友監督の言葉は、全国でロケの受け入れをする地域に希望を与えてくれ、わたしたちに「次の旅先探し」のきっかけを与えてくれた。


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