久しぶりに観劇ネタです。(※ネタばれ注意)

歌舞伎座では、中村勘九郎の息子二人のお披露目公演の真っ最中ですが、ときを同じくして、東京芸術劇場(東京・池袋)で故・中村勘三郎へのオマージュ「足跡姫」が絶賛上演中です。

足跡姫

作、演出は野田秀樹。勘三郎と野田さんは同い年で、大親友。野田さんは新作歌舞伎を3本書いていて(2本は勘三郎主演、1本は勘三郎の次男・七之助主演。「姫」が主役なので女方の七之助なのです)、野田地図でも勘三郎さん主演で「表に出ろいっ!」というのをやってます。

ちなみに私は十八代目中村勘三郎の大ファンでした。勘三郎さんのおかげで、歌舞伎好きになったと言って過言ではありません。

歌舞伎うんちくを語ったり、難しいことを考えながら観たりしない私みたいな一般大衆に、

「歌舞伎は、エンターテインメントだ!!」

と思わせてくれたのが十八代目中村勘三郎。

浅草やら大阪城公園に小屋をぶったてて、まるで江戸時代の芝居小屋の雰囲気をそのまま再現してしまった「平成中村座」、

舞台の背面が開いて渋谷の街と劇場が一体化したり(これは中村座でも)、歌舞伎なのにHipHopの歌を混ぜ込んだり、客席を役者たちが縦横無尽に芝居をしたり、とにかく毎回仕掛けが楽しかった渋谷のBunkamuraでの「コクーン歌舞伎」、

”芸能の街・赤坂で歌舞伎を!”という勘三郎のひと声から始まった赤坂actシアターでの「赤坂大歌舞伎

と、とにかく素人でも夢中になれる、楽しめる歌舞伎をたくさん観せてくれました。

そんな勘三郎さんと大親友で、新作歌舞伎もつくりあげてきた日本演劇界が誇る野田秀樹さんが「勘三郎へのオマージュ」というのです。

期待するでしょう、それは!あまりに期待しすぎて、+500円くらいになるけれど自宅配送で特別チケットで申し込んだほどです(笑)

足跡姫

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さて、前置きが長くなりました。

足跡姫」、キャストはもちろん豪華です。

宮沢りえ、妻夫木聡、古田新太、佐藤隆太、鈴木杏、池谷のぶえ、中村扇雀

足跡姫

勘三郎オマージュなんだから、男が主役じゃないの?と思ったのですが、宮沢りえが主役。勘三郎と色恋ネタもあった人なのになーというのが思い浮かび、個人的にはへんな邪推をしなくていい人がよかったけれど、野田地図常連の女優さんだし、それも含めてのオマージュか?と思ったり・・・だから、やむなし。

まず、「勘三郎オマージュなのに、なぜ足跡姫?」という疑問がありながら、途中から「ストレートに表現しないのは、やっぱり野田地図だからなのか?」とか、「勘三郎へのオマージュ=演劇へのリスペクトと認識しろってことなのか?」とかどんどん疑問が湧いてくる・・・(筋は好き、おもしろかったし。個人的には池谷のぶえさんが最後まで強烈な印象)

もちろんお芝居として楽しみながらも、「勘三郎へのオマージュ」を期待しすぎた私は「まさかの期待はずれ?」とがっかり具合が半端なかったんです。

ラスト5分までは。

ラスト5分、大号泣です。本当に号泣です。「ありがとう、野田秀樹さん」と2時間半の自分を大反省。

勘三郎ファンだった人、ぜひ観てほしい。歌舞伎座で勘九郎親子の公演を観て、池袋にも来てほしい。

ただ、観客席を見渡して思ったこと。お客さんは「野田地図ファン」と「勘三郎ファン」が混在しています。

きっと、野田地図ファンにとっては「演劇へのリスペクト」。それで、なんで最後にこんなに号泣している人がいるんだ?と思ってるんじゃないかしら。

最後の最後で、半端ない泣き方をしている人が、ちらほらいるんですよ、私のように。今回唯一の歌舞伎役者・中村扇雀さんのちょっとしたセリフで笑ったりするのも、そんな泣いている人たち(苦笑)。

勘三郎ファンにとっては、「あぁ、もう一度勘三郎さんの舞台がみたいなぁ」と心から思う、まさに「勘三郎へのオマージュ」作品です。

本当に、もう一度、勘三郎さんのお芝居を生で観たかったなー。

生前、勘三郎さんは「肉体の芸術は死んだら残らない」というような話をしていたと思います。それをまんまと見せつけられ、でも、だからこそ、同じ時代を生きた人しか味わえない空気があり、でも歌舞伎は時代を超えていける「芸」や「仕組み(襲名)」を持っていることをあらためて実感。

子どもを産んでから、すっかり歌舞伎を観る機会が減りましたが、ちゃんと観に行きたいなと思います。勘九郎たちも、今度ある染五郎一家も。

 

 


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