人魚は逆鱗を食べる・・・主演・松たか子。
この2つのキーワードだけで、「観たい」と思いチケットを取った今回の野田地図NODA MAP。NODA MAPは毎回に行くわけではありませんが、難しくて、正直、本来の意図や意味をきちんと理解しきれないまま終わっている作品もあります。
が、今回はかなりストレート。終盤、気がつけばずっと涙が流れていました。
「人魚は、ひとつの『逆鱗』を食べる」
昔々の昔々の昔々のその昔、
沈没船の窓越しに交わした人魚と人間の約束。
その約束を果たすために、
人魚は人間のふりをして、自ら志願して地上に現れた。
だが、その人魚が現れた場所は、
海中水族館の『人魚ショー』の真っただ中。
そこで人魚は、人魚のふりをした人間と出会う。
やがて深夜の海中水族館、
そこに運び込まれてきたある「モノ」とともに、
物語は深い深い海の底へと潜りこんでいく。
そこにみえてくるものは・・・・・・。
阿部サダヲ、瑛太、井上真央というキャストだし、満島真之介も出ているし、最初は「水族館」と「人魚」を題材にしたそれはそれは楽しいお話。
あまりの楽しさにNODA MAPであるということをすっかり忘れておりまして・・・。NODA MAPは必ず重たいテーマがやってくるんですよね、そういえば。そして、今回の重さ、メッセージの突き刺さり方は、久しぶりにヘビー級でした。ただ、いまを生きるわたしたちが絶対に観ておいたほうがいい舞台であることは間違いないと思います。
(ネタバレなので、嫌なひとはこの先は読まないでくださいね)
ひとそれぞれ、主義主張、信仰も宗教も自由でいいし、それを押し付けたり、声高に叫んだりするのは、わたしはあまり好きではありません。
日本人(全員ではありません)に生まれた最大の強みであり、弱みであるのは、無宗教、萬の神信仰であるために、妄信的にならずに、バランスを保って、世界宗教図を見られること。一方で信仰が生活に根付いていないがために、信心深い人たちの思考を理解することはできない。
そんななか、疑問を持とうが、持つまいが、妄信的に突き進んだおろかな時代があった。人魚という美しい名前とは裏腹に、ひとの命がいとも軽く扱われていた時代があった。
「人魚は逆鱗を食べる」。
こんなに詩的な表現が戦時中の暗号で、原爆をすでに下ろした戦艦を攻撃するために、人間魚雷で散っていった若者たちのことは、どんどん忘れ去れている。
戦後70年。わたしは小学校のとき、なぜか戦争の悲しいお話ばかりを読む子でした。
野田秀樹さんは天才だといままでも思っていたけど、今回の「逆鱗」で本当に天才だと思いました。押し付けなんていらないし、声高に叫ぶこともいらない。エンターテイメントとして、観客を楽しませ、そして最後にメッセージを強烈に残す。
いま、いちばんお出かけする機会が多いのは水族館(年間パスポートを持っているから)。そして娘にイルカブームが到来中。
これからきっと、水族館に行くたびに、イルカを見るたびに、この『逆鱗』を思い出すことになると思います。
わたしのライフワークである「旅行」は究極の平和産業。大学生のときからいちばん行きたい国はイスラエルでした。平和じゃないとどこにも行けない。
平和であり続けるためにできる限りのことを、自分なりの方法で。
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